DAPI染色による血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells : CTCs)の検出精度向上

【概要】転移性のある組織由来ガン細胞は血液系やリンパ液系を循環し別の組織へ転移しようとする。このように血液中を循環しているガン細胞は血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells : CTCもしくはCTCs)と呼ばれている。これまで血液中のCTC検査では、乳がん、前立腺がん、大腸がんなどの治療効果の判定や予後予測としてアメリカ食品医局(FDA)の承認を受けたセルサーチシステム(CellSearch system)の有用性が認められている。当社フローサイトメーターOn-chip Sortは、このセルサーチシステム(CellSearch system)を上回るCTC解析の正確性と再現性を目標とし装置開発を進めている。On-chip Sortの特徴としては、従来のフローサイトメーターの解析能力を生かしマルチカラー(多重染色)やCTCsがEpCAMやサイトケラチン(CK)単独発現だとしても検出できることなどを可能としている。これは他のマーカーを組み合わせることにより、CTCにおける幅広いガン細胞腫の検出を可能とすることを意味している。今回は更なる検出精度向上のため、組織染色等で一般的に使用されているDAPI染色を導入したので報告する。

【目的】  
本研究では、DAPIによる核染色が弊社のセルソーター”On-chip Sort”において検出可能か検討すると共にCTCs検出精度向上につながるか評価した。

【試験方法】末梢血4mLにCTCと仮定するPC-9(肺がん由来)細胞株を100個程度スパイクし血球除去処理後、一般的なCTCマーカー:サイトケラチン(CK)-FITC、EpCAM(CD326)-PE および白血球マーカー:CD45-AlexaFluor700、核染色:DAPIで染色しOn-chip Sortで全量流し切った(定量性保持)。

【結果】血液細胞とCTCと仮定するPC-9(肺がん由来)細胞株をそれぞれDAPI染色した。血液細胞とPC-9細胞の染色レベルが異なるものの非染色細胞及びゴミ等のピークより強いピークを示し、細胞(DAPI陽性)と細胞片やゴミ等(DAPI陰性)を区別できることがわかった(Fig.1A)。3種類確認できるピークは、左から細胞片やゴミ等(DAPI陰性、CD45陰性) 、血液細胞(DAPI陽性、CD45陽性)、PC-9細胞(DAPI陽性、CD45陰性)と確認できる(Fig.1B)。

CTC2-1 webアプリ
Fig.1A )血液細胞とCTCと仮定したPC-9細胞をそれぞれ単独でDAPI染色した。下段は非染色のもの。上段はDAPIで染色したもの。左から血液細胞、PC-9、Mix (血液細胞とP-9細胞をまぜたもの)。 B)前処理の段階から血液細胞にPC-9細胞をスパイクしたサンプル。DAPI、CK、EpCAM、CD45抗体で染色し解析した。DAPIとCD45で展開した。

その他ファクターをCTCsパラメータとして導入可能だが、我々はCTCs基本パラメータとしてサイトケラチン(CK)陽性、EpCAM陽性、CD45陰性をCTCsと定義している(Fig.2A)。DAPIで核染色をしなかった場合、細胞以外のプロットの混入が確認される(Fig.2B赤枠内)。しかし、DAPI陽性以外を除いたプロットは混入が確認できない。 血液7.5mL中に含まれるCTCs(血中循環腫瘍細胞)は、数個から多くても数十個といわれている。それに加え大部分の血液細胞を前処理で除去するため、解析時には細胞がほとんどなく細胞片やゴミのほうが多く検出される。そのため、細胞片やゴミの除去は、CTCsを正確に解析・分取するためには不可欠であり、DAPI染色の有用性が示唆された。

CTC2-2 webアプリ
Fig.2 A)あらかじめ4mLの血液にCTCと仮定したPC-9をスパイクし、血液細胞除去、固定、抗体反応(DAPI, CK, EpCAM, CD45)等の前処理をし、当社フローサイトメーターOn-chip Sortで解析した。B)DAPI非染色のサンプル。DAPI染色を加え細胞片等を除去したものと比べて非特異的な混入がある(赤枠内)。