On-chip Droplet Generatorを用いたWater-in-oilエマルション内への大腸菌封入とその培養    ~単一種細菌単離の可能性~

【概要】 近年、water-in-oilエマルションのような微小水滴内を利用した生化学反応への期待が高まってきている。
微小区画を用いる利点として主に、
1)阻害性物質の影響低減 2)複数の目的産物の同時処理
の2つが挙げられる。溶液をエマルジョンとして封入し多数の区画に分配することで不純物が多い試料で起こりうる反応抑制を回避したりコンタミネーションを軽減したりすることが可能となっている。
実際、エマルション内でPCR反応を行うことにより、コンタミネーションの効果を低減し、非区画化条件では起こりにくい遺伝子の増幅を効率的に行うことができることが知られおり、次世代シーケンス解析のサンプル調整などにも応用されている1), 2), 3)。
 同様に、微生物培養においてもこの2つの効果が得られる。たとえば、自然界には未だ単離培養が確立されていない微生物種が存在するが、区画ごとに単一種を分離して増殖、さらに目的の種が封入されている区画を分種することができれば、微生物の未知機能解明に貢献することができるだろう。本報告では、当社製品のOn-chip Droplet GeneratorとOn-chip Sortを用いた微小区画内での微生物培養と分種を目指し、water-in-oilエマルション内で大腸菌を培養、分種できることを示す。

【目的】  water-in-oilエマルション内への大腸菌の封入と培養の検討およびその目的物を分取し、単一種の分離培養の可能性を示唆することを目的とする。

【試験方法】 GFP発現大腸菌をBrain Heart infusion液体培地に調整した。濃度は大腸菌を含むエマルションと含まないエマルションの数が50%ずつになるよう調整した。オイル成分にはミネラルオイル、界面活性剤にはSpan80、Tween80、TritonX-100を用いた。 これらをOn-chip Droplet Generatorで処理することにより、大腸菌を含む培地をエマルション化し封じ込めた。その後、エマルションを室温で20時間静置し、エマルション内部の大腸菌の増殖を観察した。20時間目にOn-chip Sortを用いて大腸菌増殖が認められる区画のみを分取した。

【結果・考察】 大腸菌を含む区画が約50%であるようなエマルションが生成された。エマルションの直径は約40 µm、大腸菌の封入個数は1個または2個であった。2時間後、大腸菌の個数は2時間で2倍以上に増殖し、4時間では10倍近くまで増殖した。20時間後には1エマルションあたり数100匹にまで増殖していた。培地の交換等を行わずに最低20時間培養することが可能であった。なお、各時間において大腸菌を含まない区画は50%と変化せず、最初に大腸菌を含む区画と含まない区画が完全に分離されていることが示された。封入時はほぼ1細菌であったことを考えるとエマルジョン内で増殖した大腸菌は単一種だと考えられる。また、培養20時間目のサンプルの蛍光強度の高い区画のみをOn-chip Sortを用いて分種した結果、大腸菌を含むものをほぼ100%に濃縮することが可能であった。オイル中ソーティングを可能とするOn-chip Sortを用いることで増殖大腸菌区画のみを選択分離することができ、増殖性を有する大腸菌の回収を可能とした。
本結果は、エマルション内に微生物を分離・培養し、選択を行うことが可能であることを示唆する。

1). R. Williams et al., Nat. Methods, 3(7), 545-550, 2006
2). J. Shendure & H. Ji, Nat. Biotech., 26, 1135-1145, 2008
3). Y. Bansho et al., Chem. & Biol., 19(4), 478-487, 2012

エマルジョン細菌封入培養 webアプリ

Fig.1 On-chip Droplet Generatorを用いて約40μmミネラルオイルエマルジョン中に大腸菌を封入した。封入直後、2時間後、4時間後、20時間後にエマルジョンを撮影し大腸菌の増殖を確認した。

Fig.2 On-chip Sortを用いて20時間後のサンプルから増殖しているエマルジョンのみを分取した。